「あああ、もうそんなの無視しちゃって!」
「虫が出たー!けど無視しよっと」
「あの人、話しかけても無視するのよね」というような状況にちょこちょこ登場するのが無視する、という言葉。
「無視」と同様の意味合いをもつ言葉に「シカト」があります。
この両者、どういった違いがあるのでしょうか。
「無視」は一般的、「シカト」は特殊な口語表現
「無視」とは……
- 人や物の存在価値を認めないことや、或る物をそれが無いように振る舞うこと。
- 人や物をないがしろにすること。
例)
信号を無視する。
人の忠告を無視する。
「シカト」とは……
- 無視したり、仲間外れにしたりすること。
- 相手の存在価値を否定するように振る舞うこと。
また、「シカト」は関東地方での使用頻度が高いとされます。
例)
「おい、シカトするなよ!」
こうして見比べてみると、「無視」は物や人に対して一般的に用いられる表現であり、「シカト」はちょっと特殊な状況下(喧嘩など)で人に対して使われる口語表現だということがわかります。
目上の方に道を教える時、「紛らわしい看板がありますが、それはもう全然シカトして、ずっと先に進んでください」とは言わないでしょう。
無視について
前述の通り、「無視」とは人や物の存在価値を認めないことです。
人対人で、相手が自分を無視している、または自分が相手を無視している。
この状況は冷ややかな喧嘩(冷戦状態)そのものですが、集団で一人の人を無視することを「村八分」と言います。
秩序を乱した村人に対し、制裁を加える意味で「火事」と「葬式」の二つを除いた交際を一切断つのです。
すれ違っても知らんぷり、田植えや米の収穫時にも手伝ってくれない、恐ろしいことには家族の誰が病気になっても医者さえ来てくれない、というのが村八分です。
あとの二分については……
「火事」は他所に延焼が広がるかもしれないので消火活動を手伝い、
「葬式」も、例えば得体の知れぬ病気で亡くなった場合の感染症が他所に拡がるのを防ぐため(昔は土葬でしたので)などの理由で手伝います。
村に留まることを許さずに追い出したり、その村の風習によっては赤ずきんを被せて無視することもあるのだとか。
また、上記の理由とは違い、「はじく」や「はぶく」が村八分の語源になっているという説もあります。
最近では、LINEでの「未読無視」と「既読無視」が繊細な方の心を悩ませる原因になっています。
「全く読んでいません」という事実を見せつけてくる「未読無視」と、「読んだはずなのに、なぜ返信が来ない?」と焦りを感じさせられる「既読無視」。
ダメージが大きいのは一体どちらでしょう?
「未読無視」にはいくつかの理由が考えられます。
- 忙しくて読めていない。
- 読んだことすら相手に知られたくない。
- 読んだり返信したりする気分ではない。
「既読無視」にはいくつかの理由が考えられます。
- 忙しくて返信できない。
- 「読みました」という意志表示。大した用件ではないのでわざわざ応えなくても良いだろう。
- LINEのやり取り自体が億劫。
- 返信したくない。
いずれにせよ、無視したままの状態では人間関係の修復はできません。
シカトについて
「シカト」は、ちょっと特殊な状況下において、無視する意味合いで使われます。
その多くは口語表現として使われ、「花札」の鹿が語源とされています。
花札の花の絵柄は、数字の代わりになっており、12カ月のそれぞれの月に、花の絵柄が描かれています。
10月の花札の絵柄は紅葉で、更にその中に首をひねって後ろ向きの(そっぽを向いているようにも見える)鹿が描かれています。
「鹿(しか)」+「10(とう)」=しかとう が転じて、賭博師の間では「しかとう」が「無視」の隠語となりました。
その数年後、しかとうが転じて「シカト」となり、今では誰でも気軽に使えるようになったのです。
ちなみに、花札の1月から12月までの花(植物)の絵柄は……
- 1月(松)
- 2月(梅)
- 3月(桜)
- 4月(藤)
- 5月(菖蒲)
- 6月(牡丹)
- 7月(萩)
- 8月(すすき)
- 9月(菊)
- 10月(紅葉)
- 11月(柳)
- 12月(桐)
です。
この中でも、牡丹は猪肉、紅葉は鹿肉、桜は馬肉の隠語となっています。
まとめ
無視とシカトの違いについて見てきました。
周囲を気にせず、他人を「無視」して勝手気ままに振る舞う、という意味の四字熟語に「傍若無人」なんていうのがあります。
今のあなたにおすすめの記事