豚の祖先である野生のイノシシを狩って、すぐに捌いて食べていた時代から変遷し、イノシシを家畜化して(豚として)飼い始めたのは、今から8000年以上も前のユーラシア大陸だといわれています。
また、東アジアにおいては、新石器時代から豚を家畜化して飼育していたとか。
いただけない所は「声だけ」と言われるほど豚の利用箇所は多く、豚肉や脂肪、皮などが世界中で有効利用されています。
豚肉を食べると免疫力アップにつながる、ということも良く言われていますよね。
そんな素晴らしい食材から作られる「生ハム」と「プロシュート」ですが、この違いは一体なんなのでしょう。
ハム、生ハム、プロシュートについて。違いは何?
ハムストリング(hamstring)ストレッチ、なんて聞いたことがありませんか?
ハムストリングは、人間の太腿の後ろ側の筋肉の総称のことです。
ここをストレッチして鍛えることで、姿勢の改善やヒップアップができるということなのですが……。
実は、ハムストリングという単語には、「もも肉のひも」という意味があるのです。
ハムを作るときに豚のもも肉をぶら下げたことが、この語源の由来となっています。
ハムについて
ハム(英: ham)は、元々「豚の骨付きもも肉」の意味があるのですが、それを塩漬けし、加工し、食品にしたものも、やはり「ハム」と呼ばれます。
欧米において「ハム」と言えば、豚のもも肉の塊を加工したものを指し、骨付きハム(ボンインハム)、骨なしハム(ボンレスハム)がその多くを占めています。
ですが、日本では豚のもも肉に限らず、「ロース肉を使ったロースハム(ロースハムは日本独特の呼び名)」、「もも肉を使ったボンレスハムや骨付きハム」、「肩ロース肉を使ったショルダーハム」、「バラ肉を巻いて造ったベリーハム」なども食品として加工され、それら全てがハムと呼ばれています。
ハムなどの食肉加工品は、食品衛生法で厳密に加熱方法、製造方法が決められています。
一般的な工程としては、「ハム」はこうして作られます。
- 整形(スジや余分な脂肪を除去し、用途別にカットする)
- 塩漬(塩、発色剤、香辛料などを加え、漬け込む)
- 充填(肉を包む薄い膜状の袋に入れる)
- 燻煙(煙で燻煙し、色づけと香りづけ。保存性も高まります)
- 湯煮、または蒸煮します(湯や蒸気で、芯まで充分加熱します)
- 冷却(冷却すると、細菌の増殖を防ぐことができます)
- 包装
- 消費者へ
一般的なハムは、滅菌のため、中心温度63度で30分以上加熱(湯煮、または蒸煮)します。
「加熱食肉製品」と呼ばれています。
生ハムについて
前述の通り、加熱滅菌したハムを「加熱食肉製品」と呼びますが、「生ハム」の製造工程においては加熱滅菌処理をしません。
そのため、生ハムは「非加熱食肉製品」と呼ばれます。
安心して食べられるのが必須条件なので、原材料である豚肉の調達から加工、保管に至るまできめ細かく徹底的な衛生管理と環境管理を行って製造しています。
一般的な工程としては、「生ハム」はこうして作られます。
- 豚肉の整形
- 塩漬
- 充填
- 20℃以下の低温で燻煙(時間をかけ、徐々に熟成・乾燥させる)
または、
- 豚肉の整形
- 塩漬
- 充填
- 燻煙せずに乾燥させる。
塩漬の時点で加える塩分量を、一般的なハムより多く入れます。
塩を多く含ませることで、豚肉の細胞内の水分が外に出て、その代わりに塩が細胞に吸収されることにより、微生物の増殖やカビの繁殖を抑えることができます。
塩は、肉を柔らかくする効果もあります。
プロシュートについて
「生ハム」には、塩漬した後、燻煙せずに、冷暗な熟成室で吊るして乾燥させるだけの方法で作られる「プロシュット」や「ハモン・セラーノ」というものがあります。
プロシュット(Prosciutto)は、イタリアでは豚のもも肉のハムのことを意味します。
プロシュットの中でも、非加熱の物を「プロシュット・クルード(prosciutto crudo)」、加熱した物を「プロシュット・コット(prosciutto cotto)」と呼んで区別しています。
日本においては、「イタリア産のものであり、塩漬後に燻煙せず、非加熱で作られた生ハム」のことを指して、「プロシュート」と呼んでいます。
燻煙もせず、加熱滅菌処理もされていないため、近年まで個人輸入の制約がありました。
加熱せず、燻煙もしていない生ハム(プロシュート)ですが、前述した通り、通常のハムよりも多くの塩分を含んでいるので長期間の保存が効き、余分な水分と油分が抜けることで、まろやかな風味が引き出されるのです。
柔らかく、塩気がありながらも口当たりがさっぱりとして食べやすい「プロシュート」は、どんな料理にも良く合います。
薄切りにしてそのまま食べたり、チーズに巻いたり、メロンやイチジクに添えて前菜として食べても美味しいです。
まとめ
ハム、生ハム、プロシュートについての違いを見てきました。
専門店でカットしてもらって食べた時のフワフワの食感が忘れられず、生ハム原木購入を思い立つ方もいるかもしれません。
パッと通販ショッピング検索を掛けるだけでも、「生ハム原木 12ヶ月熟成 6.5~8.5kg」などという表示が飛び込んできますよね。
毎日かなりの量の生ハムを消費し続けなければ食べ切れないので、どうかご用心を。
「子豚のピグリンは、どこかの農場に雇ってもらおうと市場に向かう途中、道に迷ってしまいます。百姓の家に泊めてもらうことになり、そこで黒豚ピグウィックに出会います。二人はベーコンと『ハム』にされることがわかったので脱出することにします……」
おっと、こんな絵本を読んだ後は「生ハム」を食べるのに気が引けそうです。
今のあなたにおすすめの記事