日本人の多くは、艶やかで美しく見えるのが蝶、地味で小汚く見えるのが蛾と区別していますね。
アクセサリーや芸術関連でも蝶をモチーフにしたものが多くあります。
だからと言って蛾を日影者として扱うのはちょっと待って下さい。
様々な区別の方法はあるが、違いが明確でない
分類学上では、どちらも鱗翅目(りんしもく)、またはチョウ目と呼ばれています。
つまり、どちらも鱗粉(りんぷん)を翅(はね)に持つ昆虫、同じ種類の生き物と言えるのです。
一般的に知られている区別の方法も実はあてにならないのです。
区別しようとしても、どちらも当てはまることが多い
先程も上げた、
- 「派手な方が蝶、地味な方が蛾」
- 「どこかに止まっている時に、翅を閉じていれば蝶、広げていれば蛾」
- 「昼間に飛んで花に集まるのが蝶、夜間に飛んで灯りに集まるのが蛾」
- 「細い胴が蝶、太い胴が蛾」
というのが区別方法として知られていますが、地味な蝶がいれば、派手な蛾もいます。
翅を広げて止まる蝶がいれば、閉じて止まる蛾もいます。
薄暗い時間帯に飛んで灯りに集まる蝶がいれば、昼間に飛んで花に集まる蛾もいます。
太い胴の蝶がいれば、細い胴の蛾もいます。
中には鱗粉が少なく、透明な翅を持つ蝶と蛾がいます。
どちらも優れた擬態能力を持つ種がいます。
このように、いくつも例外があるのです。
どうしても区別したいなら
口吻(こうふん)と触角を見れば区別しやすいでしょう。
蝶の口吻は細長く、横から見ると渦巻き状に巻いています。
蛾の口吻も細長いのですが、ストローや針のように真っ直ぐで短いものが多くいます。
中には成長してから食事を必要としないために、口吻そのものがない蛾がいます。
蚕の親である蚕蛾がその例です。
蝶の触角は、先っぽが綿棒のように膨らんでいるのが多くいます。
蛾の方は、先っぽが膨らんでいない触角と、鳥の羽根のように見える触角を持つものが多くいます。
しかし、これも例外があります。
先が細くなっている蝶がいれば、膨らんでいる蛾もいるのです。
図鑑で見るのなら、「科」の名前に注目してみましょう。
アゲハチョウ、シジミタテハ、シジミチョウ、シャクガモドキ、シロチョウ、セセリチョウ、タテハチョウという科であれば蝶として、以外のものは蛾と見て良いでしょう。
なぜ区別できないのか
上記のように、区別しようとしても例外がいくつもあり、明確な分類がしにくいのです。
系統樹で見ると、蝶は蛾から枝分かれしたと言われていますが、判別が難しいのが現状です。
世界規模では、蛾の種類は蝶の種類の20~30倍いると見られています。
では何故、「蝶」と「蛾」という区別する言葉があるのでしょう?
それは見た目に差があるのと、言葉の流入に関係していると言われています。
古い時代の漢字圏では「蝶」はヒラヒラと木の葉のように舞う虫を、「蛾」は蚕の成虫か、それに似た虫を指す言葉でした。
つまり、見た目にだけ左右されていたのです。
今日では蛾と呼んでいるものが蝶と呼ばれていたことがありました。
逆もまた然りです。
日本では、漢字が入ってくる以前も見た目だけで違うものとされてきた可能性があります。
英語のバタフライ(butterfly)と モス(moth)の影響も少なからずありますが、英語圏でのバタフライは鱗翅目の大型種で、モスは小型種を指します。
日本に入ってきてから様々な経緯でバタフライは蝶、モスは蛾と表わされるようになりました。
まとめ
蝶と蛾に明確な違いがなく、同じ分類に属されています。
どれもこれも例外があってややこしいのですが、最も区別しやすいのは口吻と触角です。
しかし、的確とは断言できないので、図鑑を用いて「科」の名前に注目すると良いでしょう。
ちなみに、わかりきったことだとは思いますが、某映画の某怪獣は「モス」という言葉が入ることから、蛾と見て間違いないですね。
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