「聞く」と「聴く」と「訊く」は、どれも「きく」と読む言葉です。
使われる場面に違いがあることは多少分かるものの、明確な意味の違いを知る人は案外少ない気がします。
というわけで、今回は「聞く」と「聴く」と「訊く」の違いについてまとめてみました。
聞く、聴く、訊くの違いについて
一番よく使われているのが「聞く」、次に使われているのが「聴く」、あまり使われていないのが「訊く」だと思います。
まず、「聞く」を辞書で調べると、「音や声を耳で感じる(知る)。」、「聞いた内容を理解してそれに応じる。」、「尋ねる。問う。」、「酒の味や香のにおいのいい悪いをためしてみる。」、の4つの意味がありました。
ただ、2つ目の「聞いた内容を理解してそれに応じる。」では「聴く」とも書く、3つ目の「尋ねる。問う。」意味でも「訊く」とも書く、となっていたので、「聞く」には「聴く」や「訊く」と書いても良い意味の場合もあるようです。
ただ、一般的によく使われている「聞く」の意味は、辞書1つ目の意味に近く「意識せずに何となく音や声を耳で感じる」ことを指します。
この「聞く」の場合は、自分にとって関心のあることは耳に入りますがそれ以外のことについては聞いていないこともあり得ます。
つまり、聞こえてくる音や声に注意を払う場合もあれば、そうでない場合である状況で使われるのが「聞く」だといえます。
ただ、辞書内2つ目の「聞く」では「市民の声を聞く」、「忠告を聞く」など「聞いた内容を理解してそれに応じる」という場合に使われます。
また、辞書内3つ目の「尋ねる、問う」の意味で使われる場合には、実際には「訊く」を使いたい場面でも常用漢字ではないため特に公用文書などでは「聞く」を使うことがほとんどになっているようです。
さらに、辞書内4つ目の「酒の味や香のにおいのいい悪いをためしてみる。」場合には、「香を聞く」などと使われますが、この場合には「利く」を使うことも多いようです。
次に「聴く」ですが、これは「意識して対象の音に耳を傾けること」を指します。
先程の「聞く」の辞書内2つ目の意味とは違い、「市民の声を聴く」や「忠告を聴く」となると、市民の声や忠告に対してしっかり耳を傾けることを意味します。
積極的に耳を傾けるという意味もある「聴く」は、意識しないと出来ない行為であり、音楽鑑賞などでもよく用いられています。
また、スピーチや相手の話を「聴く」といった場合でも使われています。
ただ例外もあり、「聞き耳を立てる」、「聞き惚れる」などいう複合語的に使われる場合には、意識して耳を傾ける音でも「聴く」ではなく「聞く」が使われています。
最後の「訊く」ですが、「訊」という漢字が常用漢字でないため馴染みの薄い言葉でしょう。
一般的に「訊く」の場合は、「自分のわからないことを質問して明確にすること」を指すため、「尋ねる」と同じ意味合いで使われていて、「道を訊く」、「先生に訊く」などのように使われています。
ただ、常用漢字ではないため「訊く」よりも「聞く」や同じ意味の「尋ねる」や「問う」を使う方が多いようです。
一般的な使い方で3つの「きく」を表してみると、「どこからか音が聞こえてきて、その音に聞き惚れてしまい長い間聴いていて気になったので、通りすがりの人にこの音はどこから聞こえてくるのか訊いた」という感じです。
日常生活において使っている「きく」はどう表記するのか、改めて考えてみると違いが明確になってくると思います。
とはいえ、様々な場合で使える「聞く」が一般的なので、こだわりを持って表現したい場合にのみ「聴く」や「訊く」を使い、それ以外は「聞く」を使っても間違いではないようです。
ビジネスで使われる「きく」
「聞く」と「聴く」と「訊く」の違いについて見てきましたが、ビジネス上でもこれら3つの「きく」は重要視されてきています。
ビジネスでは、相手の話を訊くことに徹することを「聞く力」、相手の話にしっかりと耳を傾けて自分が知りたい情報を知る「聴く力」、相手自身の事を尋ねて詳しく訊きだす「訊く力」があり、これら3つの力はそれぞれは分けて考えられています。
そして、これら3つの力を上手く使いこなせることは仕事でも有利に働く可能性が高くなります。
これまでコミュニケーション能力といった場合には、話す技術や能力が重要視されていましたが、最近では「きく力」の重要性が高まっています。
それゆえ、これら3つの「きく」力の違いを知り、身に付けることは仕事の面でも役立つといえるでしょう。
まとめ
今回は「聞く」と「聴く」と「訊く」の違いについてご紹介しました。
基本的に「聞く」は「意識せずに何となく音や声を耳で感じること」を指し、「聴く」は「意識して対象の音や声に耳を傾けること」を指し、「訊く」は「尋ねる、問うこと」を指します。
ただ、「聞く」が複合的な使われ方の場合は意識して耳を傾ける意味でも「聴く」ではなく「聞く」が使われるなどの例外があります。
また、「訊く」は常用漢字でないため多くの場合は「聞く」や「尋ねる」、「問う」などが使われているようです。
今回は以上になります。
ご参考になれば幸いです。
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