「異常」と「異状」は、どちらも「いじょう」と読む言葉です。
「異常事態」や「異常気象」など日常的によく使われている「異常」に対して、「異状」はほとんど見かけません。
それゆえ、両者の違いを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか?
というわけで、今回は「異常」と「異状」の違いについてまとめてみました。
異常と異状の違いについて
まず、この2つの言葉の意味を辞書で調べてみると、「異常」は「普通ではない様子。」となっており「正常」の反対を指す言葉とされ、「信号機の異常」、「異常な発達」、「異常な執念」という風に使われています。
一方、「異状」は「普段と違ってどこか具合の悪い点があると感じられる状態。」と表記されており、「異状したい」(医師法第21条[異状したい等の届出義務])や「西部戦線異状なし」(ドイツの小説家レマルクの作品名)など限定的に使われている言葉のようです。
また、警備員の巡回報告の際などに使われる「いじょうなし」は「異状なし」を用いるとされています。
「異常」と「異状」の漢字を見てみると、「常」と「状」だけが違います。
「常」は訓読みで「つね」と読み、「いつも」や「ふだん」という意味を持つ漢字です。
それゆえ、「異常」は「ふだんと異なっている」という意味と解釈できます。
一方の「状」は「ようす」という意味があり、「異状」は「異なったようす」という意味に解釈できるため、様子や状態を強調した意味であるといえます。
ちなみに「異常」は形容詞(形容動詞)としても使いますが、「異状」は名詞としてのみ使われるため、「いじょうな暑さ」、「いじょうに増える」などの名詞として使われない「いじょう」は、全て「異常」と表記することになります。
つまり、先程の辞書での意味も合わせて意味をまとめると、「異常」はふだんとは異なっていること全般を指す言葉であり、「異状」はふだんと違っている様子・状態を指して名詞として使われる言葉だといえます。
「異常」は形容詞(形容動詞)・名詞として多くの場面に使えますが、「異状」は名詞表現のみと限定されており、特に様子や状態にこだわって表現したい場合に限定して使われる表現といえるでしょう。
名詞の「異常」と「異状」の使い分け
「異常」は広く使われている言葉であり、「異状」は使われる場面が限定される言葉であると紹介しましたが、そうはいっても名詞表現に使われる場合の、「異常あり(異常なし)」と「異状あり(異状なし)」では、どちらを使うか迷う場合もあります。
その場合は、その状態や様子が数値的に明らかな場合は「異常」を使い、その状態や様子が感覚的な判断に留まる場合は「異状」を使うことで使い分けることができます。
例えば、「館内を点検したが、いじょうはない」という場合、数値を見て点検するなどして正常であることが明らかな場合は「異常はない」となります。
一方、普段と様子が同じと何となく感じたり、普通通りなのが目に見えて分かるなど感覚的な点検の場合には「異状はない」となります。
「異常」でも間違いとはいえませんが、より適切な表現は「異状」を使った表現という訳です。
まとめ
今回は「異常」と「異状」」の違いについてご紹介しました。
「異常」はふだんとは異なっていること全般を指す言葉であり、「異状」はふだんと違う様子や状態を指した名詞表現として使われる言葉であるといえます。
両者の使い分けは、その様子や状態が数値的に明らかな場合は「異常」を使い、その様子や状態が感覚的な判断に留まる場合は「異状」を使うと良いようです。
今回は以上になります。
ご参考になれば幸いです。
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